中小製造業の事業計画づくりを18年続けている柏木哲さんは、支援に入って最初の面談で数字を見ません。書かせるのは1文だけです。
「この会社は、何で選ばれていますか」
なぜ数字より先にその1文なのですか。
柏木 計画は他人に読ませるものだからです。銀行でも、後継者でも、これから入る社員でもいい。読む人が「なるほど、だからこの数字か」と思えないと、計画書は棚に入って終わります。
その1文が書けない会社は多いですか。
柏木 半分以上は書けません。書けても「品質」「対応の速さ」で止まる。それ、どこの会社も書きますよね。競合が同じ言葉を使えるうちは、まだ理由になっていないです。
書けるようにするには。
柏木 取引先に聞いてもらいます。なぜうちに出しているんですか、と。だいたい社長の想定と違う答えが返ってきます。設備でも技術でもなく、無理な納期を断らずに代案を出すから、みたいな話が出てくる。
選ばれている理由は、社長がいちばん見えていません。毎日やっていることは、本人にとって当たり前になるので。
その1文が決まると、計画のどこが変わりますか。
柏木 値段です。断らずに代案を出すのが理由なら、それは工数なので、見積に載せていいことになる。今まで無料でやっていたところに金額がつきます。数字を先に触ると、ここが値引きの対象になってしまう。
値上げの話に見えますが、違いますか。
柏木 違います。値上げは何も変えずに数字だけ動かすことです。こっちは、渡しているものを正しく書き出す作業です。書き出した結果、下げる項目が出ることもあります。

柏木 哲 灯
経営コンサルタント / 柏木経営研究室
- 事業計画
- 価格設計
- 組織づくり
中小製造業の事業計画づくりを18年。数字を締めるより先に、その会社が何で選ばれているかを言語化することから入る。
