KANOE
机に書類を広げ、相談する二人

ケース紹介仕組み化会員の声 第19回

社長が三日休む。そのとき、会社は

面談で丁寧に商品を説明しても、「少し考えます」で終わることが続きました。比較表を作り、保障の違いも説明している。質問にも答えたはずなのに、最後になると相手との距離が遠くなるように感じていました。

この記事は、サイト構築時のサンプルです。実在の取材に基づくものではありません。

保険の説明が届かない

面談で丁寧に商品を説明しても、「少し考えます」で終わることが続きました。比較表を作り、保障の違いも説明している。質問にも答えたはずなのに、最後になると相手との距離が遠くなるように感じていました。

私は一人で保険の相談を受けています。小さな会社の経営者と話す機会が多く、当時は、備えの不足を見つけて提案することが役割だと考えていました。事故が起きたら、入院したら。起こり得ることを並べるほど、役に立てているつもりになっていたのです。

ところが、ある経営者に「心配なのは分かるんですが、今のうちには何から必要ですか」と聞かれ、資料のページを戻るしかありませんでした。商品ごとの説明はできても、その会社の優先順位になっていなかった。足りなかったのは資料ではなく、相手の仕事を知る時間でした。

清掃会社の社長が怖いもの

そのことを具体的に感じたのは、清掃会社の社長との雑談でした。現場の事故について尋ねると、社長は「もちろんそれも怖いけど、自分が休む方が困る」と言いました。

体が動かなければ売上が減る、という話かと思いました。でも、続いたのは見積りと請求の話でした。どの仕事にいくらで応じたか、どの顧客へいつ請求するかを、社長だけが把握していたのです。スタッフは清掃できるのに、お金のやり取りが止まってしまう。

「三日、電話に出られなかったらどうなりますか」。私が聞くと、社長は少し考えて「現場より、事務所が困るね」と答えました。病気の大きさではなく、ごく短い不在でも困る仕事がある。その日から私は、人、設備、資金、情報の何が一人に集まっているかを、商品より先に聞くようになりました。

三日止まる仕事を探す

次の面談では、社長の一週間を一緒に書き出しました。朝の現場調整、見積り、顧客への連絡、請求の確認。順に並べると、本人にとっては小さな用事でも、別の人が代わるには情報のない仕事が見つかります。

担当を決めれば終わるわけでもありませんでした。見積りの計算に使う表は共有されていても、どの条件なら追加料金を相談するのかは社長の頭の中にあります。請求書を作る操作ができても、送ってよいかを判断できない。手順と判断の両方が必要でした。

そこで、まず一つの見積りについて、社長が隣にいる状態で別のスタッフに流れを追ってもらいました。途中で止まったところを記録し、翌週に見直します。いきなり全部を任せるのではなく、留守でも動かせる部分を少しずつ増やす。保険を選ぶ以前にできる備えが、思っていた以上にありました。

社長が特に驚いたのは、自分では何も考えずに答えている質問でした。取引先ごとの細かな違いを、経験だけで覚えていたのです。全部を文章にする前に、よく迷う場面から残すことにしました。

保険で守れない部分

保険で用意できるお金と、会社の中で共有すべき情報は、代わりにはなりません。資金の備えを考えても、請求先や契約の内容が分からなければ、日々の仕事は動かしにくいままです。逆に、手順が整っていても、それだけで費用の問題が消えるわけでもありません。

私は紙を二つに分けました。一方には、今のやり方を変えることで減らせそうな困りごと。もう一方には、それでも残る負担。保険の比較は後者を整理してから行います。商品を当てはめる前に、何を備えたいのかを本人の言葉で確かめました。

この進め方にすると、その日に新しい契約へ進まないこともあります。以前なら営業が弱かったと思ったかもしれません。でも、社長が自分の会社の状態を説明できるようになれば、次に何を比べるかは明確になります。結論を急がせずに済む面談へ、少しずつ変わりました。

他の専門家に渡す判断

もちろん、私が会社の仕事をすべて整理できるわけではありません。請求と資金の相談は税理士へ、人の配置や働き方の相談は社労士へ。社長の同意を得て、必要な範囲だけをつなぎました。

紹介するときに気をつけたのは、面談の内容を丸ごと送らないことです。「不在時の請求業務について相談したい」と、今回の論点を先に確認します。何を共有しないかも社長と話しました。専門家が増えることで、会社の情報が際限なく広がる形にはしたくありませんでした。

同じ面談へ全員を呼ぶより、まず誰の確認が必要かを決めた方が進むこともあります。私が回答を取りまとめる場合も、誰が何を判断したのかは分かるようにしました。顔の見える相手へ相談を渡せることは、私が詳しくない部分まで答えることとは違います。その区別が、社長の安心にもつながりました。

売らない面談は仕事になるか

専門外の制度について、その場で答えてしまい、後から訂正したことがあります。相談を止めたくない気持ちがありました。でも、早い返事ほど親切だと決めつけるのは危険でした。

今は分からないことを持ち帰るとき、誰に何を確認して、いつ返すかを伝えます。保険についても、希望、比較の理由、既にある契約との関係を記録します。分かりやすく話すことと、条件を省略することを混同しないようになりました。

売らない面談が仕事になるのか。その迷いは、すぐには消えませんでした。だから、相談で整理する範囲と継続対応の扱いを明らかにし、際限なく何でも引き受けることはやめました。成約だけでなく、再相談の内容や見送った理由も残しました。どの話に時間がかかり、どこまでが自分の仕事なのかを見直す材料になりました。

確認して返した内容は、口頭だけで終わらせず、前に話したこととどこが違うかを短く残しました。訂正をなかったことにしない方が、次の相談でも分からない点を率直に話してもらえました。

更新日に変わった言葉

更新の面談で、清掃会社の社長は「前より会社の弱い場所が分かる」と言いました。新しく何かを買ったからではなく、誰に何を任せられ、どこはまだ自分しか判断できないかを言えるようになっていました。

すべての仕事を代われるようになったわけではありません。ただ、社長が現場へ出ている間、事務所で準備を進められることは増えました。確認が必要なものも、何が分からないかを書いて渡せる。電話をつなぐたび、最初から説明する場面が減ったそうです。

その話を税理士へ戻すと、次は月末の確認をどう分けるかという相談になりました。私の契約を増やすための紹介ではありません。社長が続けて考えたい問題があり、その都度、得意な人に頼める関係が残った。それは、更新の案内だけをしていた頃には生まれなかったやり取りでした。

更新の席で、社長の方から「次は、この担当を増やしたい」と話が出ました。以前は保険料の確認で終わっていた時間です。私が不安を探して提示するのではなく、本人が今の備えを言えるようになった。その変化を感じました。

会社の弱さを話せる場所

保険の相談を始めると、経営者は立派な会社の姿を話そうとすることがあります。でも、備えを考えるためには、整っていないところも聞く必要があります。担当が曖昧な仕事も、つい自分でやってしまう作業も、責めるためではなく、止まったときの影響を知るために聞いています。

「社長が三日休む」。それだけで会社がどうなるかは、会社ごとに違います。だからこそ、一般的な心配を大量に並べるより、その三日を具体的に想像した方が話しやすい。私にとっても、商品を説明する前に相手の事業へ戻るための問いになりました。

今は小さな会社の事業継続を整理し、必要な備えを分かる言葉で比較しています。契約を増やすと決めてからでなくても構いません。現在の備えと、社内で気になっていることを、一度並べるところからお話ししています。

営業前に考えておきたいこと

顧客理解:保険の話の前に、人、設備、資金、情報のどこが一人に集中しているか。

小さな実証:業務の流れを書き出し、保険で備えることと、手順共有で減らすリスクを分けました。

仕事の境界:断定せず確認先を明らかにし、意向把握、比較理由、既契約との重複を記録します。