公開半年後のサイト
サイトを公開した瞬間は喜ばれても、半年後には古い情報が並んでいました。終わった催しの案内が残り、増えたサービスは載っていない。会社は動いているのに、サイトだけが公開した日に止まっていました。
私たちは二人でWebサイトを制作しています。文章や写真、開発は、内容に応じて専門の人に協力してもらいます。以前は、見やすく整え、予定どおり公開することに集中していました。更新方法も説明し、操作の資料を渡していました。
それでも情報が古くなると、依頼主が忙しくて使えていないのだと思っていました。でも、こちらの仕事が公開で完了する一方、依頼主の仕事はそこから始まります。その引き継ぎが、本当にできていたのか。問い合わせのない保守契約を見ながら、少しずつ気になり始めました。
更新担当者の小さな本音
保守中の十社へ状況を聞くと、七社で三か月以上、更新が止まっていました。そのうち五社は、操作が分からないというより、「何を載せてよいか」で迷っていました。
ある担当者は、完成している商品なら掲載できるけれど、試している段階の取り組みを載せてよいのか分からないと言います。別の会社では、写真を使ってよいか、社長の確認がどこまで必要かが曖昧でした。ログイン方法をもう一度教えても、そこは解決しません。
この十社だけの確認なので、小さな会社すべての事情とは言えません。ただ、私たちが作ったサイトの運用を見直すには十分でした。広報の担当者とも話し、入力の仕組みを増やす前に、内容を選ぶルールが必要だと分かりました。止まっていたのは、更新ボタンを押す手だけではなかったのです。
更新しようとした途中の画面を見せてもらうと、入力欄は埋まっていました。最後の公開だけが押せない。私はそこで初めて、操作説明を分厚くしても解決しないことを実感しました。担当者に必要なのは、間違えずに押す方法より、押してよいと判断する根拠でした。
ページを減らす決断
次の制作では、ページ数を増やす前に、公開後に誰が使うかを聞きました。会社案内、サービス、事例。必要そうなものをすべて分けるのではなく、何を見た人にどこへ進んでほしいかを整理しました。
依頼主は、事例を頻繁に増やしたいと考えていました。でも、専任の広報担当はいません。長い取材記事を毎回用意する前提では、すぐに止まってしまいます。最初は、課題、行ったこと、写真を短く載せられる形へ絞りました。
機能が少ない提案に、不安そうな顔をされることもありました。そこで、公開時にそろう情報だけでなく、半年後に何を更新できるかを一緒に見ました。ページを減らすのは、内容を薄くするためではありません。会社の中で続けて扱える量へ、入口を整えるためでした。
依頼主が自分で触る日
今回は、依頼主自身が一件更新するところまでを制作工程に入れました。私が横で操作を見せるのではなく、担当者に文章と写真を選び、実際に入力してもらいます。
途中で止まったのは、やはり操作だけではありませんでした。「このお客様の名前は出してよいですか」「このくらいの出来事でも事例になりますか」。そうした問いを、その場で答えて終わらせず、次にも使える短い案内にしました。
公開してよい内容、確認が必要な内容、まだ載せない内容を分けます。迷ったときの相談先も決めました。一回できたから大丈夫とは考えず、公開後の振り返りの日も設けます。説明会に参加したことと、自分の仕事として更新できることは違う。その差を制作の中で見られるようになりました。
一件目の更新は、こちらが完成原稿を用意しすぎないようにしました。全部そろえて渡せば、その日は進みます。でも次にまた止まるなら、練習になりません。少し迷う場面を一緒に見ることで、普段使う案内を作れました。
機能を足さない見積り
以前、良かれと思って予約や会員向けの機能を提案し、公開後の負担を十分に説明できなかった案件がありました。使えることが増えるほど、確認することや管理するものも増えます。
今は初期費用と、その後に必要な費用を分けて説明しています。外部サービス、保守、権限、バックアップ、追加の改修。それぞれ何のためのものかを、担当者が判断できる言葉にします。詳しい仕様を大量に送るだけでは、理解してもらったことにはなりません。
最初の整理と一回の更新確認を、小さな範囲で試すこともあります。そこで既存の仕組みで足りると分かれば、大きな作り直しを勧めない場合もあります。機能を足さない見積りを出すのは少し勇気が要りましたが、依頼主にとっては、維持できるかを考えやすい提案になりました。
保守で何を頼めるかも、公開後に思い出してもらえる場所へまとめました。契約時に説明したから終わりではなく、困った時に見つけられることまで含めて考えるようになりました。
ライターと開発者の境目
ライター、写真家、開発者とは、ページごとの役割を早い段階で共有しました。文章が全部できてからデザインへ渡すと、必要な写真が足りないと分かることがあります。逆に、形を決めてから原稿を入れると、肝心の説明が削られることもあります。
全員で同じ作業をするのではなく、判断が必要な場面で意見をもらいます。ライターには何を伝えるページかを、写真家には更新にも使える素材を、開発者には担当者が迷いにくい仕組みを相談しました。
窓口は私たちにまとめ、誰へ何を聞くかで依頼主を迷わせないようにしました。公開後の追加も、今の範囲に含まれるかを曖昧にしません。仲間が助けてくれるから何でもできる、ではなく、頼る理由と担当を説明できることが、チームで作る価値になりました。
営業がすぐ送れるURL
公開からしばらくして、担当者が自分で事例を一件追加しました。営業から「この内容を送りたい」と言われたとき、新しいURLをすぐ渡せたそうです。
大きなアクセス増の報告ではありません。でも、以前なら資料を探し、画像を添付し、個別のメールを作っていた説明が、サイトの一ページで共有できました。公開したものが、会社の中でも使う道具になり始めていました。
その後の確認では、更新できた件数だけでなく、どこで迷ったかも聞きます。担当者が変われば、説明し直すこともあります。ルールを作って終わりではなく、引き継ぐ人が読めるかを確かめる。その小さな仕事を重ねることで、保守の相談も「壊れたときだけ」ではなく、使い続けるための会話へ変わっていきました。
営業担当から戻ってきた質問も、次の更新の候補にしました。何を発信するかを担当者一人で考えるのではなく、お客様へ説明した内容を社内で渡す。サイトを動かすために別のネタを作るより、既にある会話をページへ置く流れができました。
翌日から始まるWeb制作
公開日は、今でも大事な節目です。形になったサイトを見て喜んでもらえるのはうれしい。ただ、それを仕事の終点にしなくなりました。翌日、誰が何を載せようとするか。その人が困らないところまで考えるのが、私たちの制作です。
広報の人と話したことで、操作が分かれば更新できるという思い込みに気づけました。ライターや写真家、開発者と役割を分けることで、依頼主が同じ説明を繰り返す手間も減らせました。ページを作る技術だけでは見えない仕事を、周りの人が教えてくれたと思います。
今は公開後の運用まで見通せる、小さな事業者のWebサイトを作っています。予算や原稿が固まる前でも、必要なページの整理から相談できます。既にサイトはあるけれど、古い情報のままになっている。そんなところから、一緒に見直すこともあります。
この事業が生まれた三つの条件
顧客理解:公開後、誰がどの頻度で何を変え、迷ったら誰に聞くのか。
小さな実証:重要ページを絞り、依頼主自身が一件更新するところまでを制作工程に入れました。
仕事の境界:初期費用、外部サービス、保守、権限、バックアップ、追加改修を分けて提示します。
